御礼とご報告:第18回 パパママセミナーを終えて

令和2年1月26日(日) 第18回 パパママセミナーのご報告です。
ご参加くださった皆様、日曜日の午前中という貴重な時間帯にお集まりいただき、心より御礼を申し上げます。
今回のテーマは、「小児科医が伝えたい こどものスキンケアに関する大切なお話」でした。

私は、日頃から、こどもの肌(皮膚)の健康は、心身の健康にも直結していると考えています。そこで、今回は、肌の健康を保つことの意義と重要性をお話するとともに、小児科医としてお伝えしておきたい「スキンケアの極意」をご紹介しました。

肌(皮膚)は、人体(成人の場合)最大の面積(1.6㎡:約畳1畳分)と重量(3.0㎏前後、体重の約16%)を有し、生まれた時から命尽きるまで、外界から内臓器を守り続けてくれる大切な臓器です。肌(皮膚)は、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓などの重要臓器と同様、「むき出しの臓器」として、常時、人の健康を守り続けています。さらに、その語源からも分かる通り、「肌」は、人の感情や気質をも表出~感知する感覚器官であるともいえます。実際に、「肌」の発生の起源は、「脳」と同じ外胚葉由来であることから、「肌は第2の脳」と称されることすらあることにも触れました。そうした「肌の万能性」を裏付ける最新の皮膚医学の知見についても説明した上で、こどもの肌の健康が、「こころとからだ」の健康につながっていることを私に確信させてくれた書籍もご紹介しました。

近年、乳幼児期の肌トラブルは、食物アレルギーの危険因子(発症要因)であるという考え方が、医学的根拠の基に広く認知されるようになりました。食物アレルギーの発症が多い乳幼児期は、特に肌トラブル予防の重要な時期でもあります。そこで今回は、スキンケアの極意と題し、肌トラブル予防のための大切なポイントをご紹介しました。その内容の一部は、小児皮膚科学のレジェンドである山本一哉先生の著書からも引用させていただきました。

スキンケアの極意
「茹でるな」「こするな」「蒸すな」を合言葉に!
お風呂のお湯の温度は37~38℃が良い。ヨーロッパの小児皮膚科学会が推奨するお風呂のお湯の温度は37~37.5℃。乳幼児の場合、体温より高温のお湯に浸かると3分で体温が湯温レベルに達することから、湯舟は3分以内に済ませることも大切。入浴の際は、素手(手のひら)で、こすらず、優しく洗うようにする。入浴後は、厚着を避け、季節を問わず、部屋の設定温度は25℃以下が良い。冬は、意外と夏よりも、「蒸されている」可能性があることにも注意。

スキンケア製品(保湿ケア)を選ぶときは、「セラミド」「へパリノイド」「ビタミンE」入りのものを!
肌にとって大切な3つの働きは、①角質層をやわらかくする ②皮膚のバリア機能を修復する ③角質層に水分を保つ。「セラミド」は①~③、「へパリノイド」は③、「ビタミンE」も③の働きをもっている。一方で、ワセリンは、①の働きをもつが、②③の働きはない。ワセリンは、皮膚を覆って守るのは得意だが皮膚そのものには無関心!保湿剤としてのワセリンのルーツは、探検家が厳寒の地で保温に用いたことに始まる。つまり、こどもによっては、ワセリンが「蒸す」原因になっている場合もあることに注意が必要!

こどもの衣服・保護者の衣服に配慮することは肌トラブル予防の大事なポイント!
素材ではなく「肌触り」を重視すべき。つまり綿100%だから心配ない!ということではない。皮膚トラブルの起こりやすい要注意エリアは、肌着やシャツでカバーされない首や手首と、“前だっこ”の際の、頬。衣服の刺激から守るべく、多めに保湿剤を塗ってケアを!

その後の、質疑応答タイムでは以下のような質問をいただきました。

  • 就寝時に布団をかけすぎるのは良くない?
  • 寝ているときの着衣はどのようなスタイルが望ましい?
  • 生後9か月、そろそろ、卒乳へ向けていきたいが、ミルクを飲んで眠りにつくのがルーチンになっている、大丈夫?
  • 夜間に十分な睡眠時間を確保するため、日中の睡眠(昼寝やうたた寝)を中断してでもコントロールした方が良いのでしょうか?
  • 現在乳児期後半、親や机を叩いて何かを訴えるたり、やたらと物を投げつけるようになったが・・・どのように躾(しつけ)すればよいのでしょうか?

いつもながら、奥深いご質問をたくさん頂戴し、むしろ、私が大いに刺激を受けております。一個人の主観的な意見に終始しないよう、小児科医ならではの知見を交えお答えさせていただきました。

今回も多くの皆様にお集まりいただき、感謝申し上げます。
皆様と近い距離間でお話しできる、お気軽、お気楽感覚のセミナーを今後ともどうぞよろしくお願いします。

メディカルパーク湘南こどもクリニック
正木 宏

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