御礼とご報告:第11回 パパママセミナーを終えて

令和1年6月23日(日) 第11回 パパママセミナーのご報告です。
ご参加くださった皆様、日曜日の午前中という貴重な時間帯にお集まりいただき、心より御礼を申し上げます。

今回のテーマは、「小児科医が伝えたい おねしょにまつわるお話」でした。
「おねしょに悩むお子さんとご両親を対象に!」といった、限定的なお呼びかけをしなかったこともあり、まだまだ、おねしょでも問題のない乳児のママから、小学校入学後も続くおねしょにお悩みのママまで、幅広くご参加いただきました。以下にセミナーの内容をまとめてみました。

夜寝ている間の尿もれのことをおねしょ(=夜尿)といいますが、おねしょと「夜尿症」の違いは? そのポイントは「年齢」です。つまり、5歳以上で、月1回以上のおねしょが3ヶ月以上続く場合は、「夜尿症」の可能性があると考えるべきなのです。さて、「夜尿症」の子どもは、どのくらいいるのでしょう? 実は、アレルギー疾患に次いで 2番目に多い小児の慢性疾患で、小学3年生で約8%、小学5年生で約5%(1クラスに2、3名程度)と、けっして少なくないのです。実は、成人したあとでも0.5%つまり200人に1人ぐらいは夜尿症が完全にはなくならないこともご説明しました。では、夜尿症は、どのように治っていくのでしょう? 一般に成長と共に自然に治癒するのですが・・・3回以上/週の夜尿は、3回未満/週と比べて自然に治りにくいことや、早めに治療することで治癒率が高くなることなどを紹介しました。一方で、治療介入後も、その多くが2~3年かけてゆっくりと治っていく病気であることもお伝えしました。
ところで、夜尿症に向き合うためには、昼間尿失禁(昼間のおもらし)がないことが前提となります。小学校低学年頃までは、膀胱にある程度の尿が貯まると無意識のうちに収縮する(無抑制収縮:未熟膀胱や神経因性膀胱で見られます)ため、突然トイレに行きたくなって「おしっこ!おしっこ!」とトイレに駆け込み、時には間に合わないこともあります。こういったお子さんには、まず、昼間尿失禁を克服してから夜尿症の治療に取りかかる必要があります。また、泌尿器系の病気の有無についても注意が必要となります。以上のような夜尿症の概念的説明をした上で、夜尿症の原因に触れました。

1つに、寝ている間に作られる尿が多いこと
2つに、膀胱が小さくて尿をたくさん貯められないこと
3つに、膀胱が尿であふれそうになっても起きられないこと
つまり、夜尿症の原因には、「夜間多尿」「膀胱機能の未熟性」「覚醒障害」の3要素が、それぞれに絡み合い、関わり合っているのです。治療にあたっては、こうした病気の原因を理解し、親子が、納得して取り組むことが重要です。お子さんなりに理解をしていただけるよう、出来るだけ平易に説明してあげましょう。

最後に、夜尿症の治療の流れに触れました。

まず、治療の大原則となる、生活改善のポイントについてご説明しました。

● 早寝、早起きをし規則正しい生活をする ● 水分の摂り方に気をつける ● 塩分を控える ● 便秘に気をつける ● 寝る前にトイレに行く ● 寝ているときの寒さ(冷え)から守る ● 夜中、無理にトイレに起こさない

夜尿症のお子さんは、生活改善を徹底することで、約2~3割は夜尿がなくなるといわれています。この生活改善の取り組みで、夜尿が治らないお子様には、薬物療法やアラーム療法といった積極的治療が必要となります。ただし、生活改善の実践が不徹底な状況で、薬物療法を行うと水中毒という副作用を発現させてしまう恐れもあります。そういう意味でも、生活改善の徹底は、夜尿症克服のための根幹といえます。以上の通り、おねしょにまつわるお話として、主に「夜尿症」について駆け足で解説しました。

質疑応答タイムでは、おねしょにまつわるお話として、トイレットトレーニングについても触れました。夜尿症の原因の一つに「膀胱機能の未熟性」があるように、膀胱機能の成熟には、個人差と個性(遺伝的要素を含む)が関与します。トイレットトレーニングに取り組む際には、是非、お子さんの「膀胱機能の成熟過程」を念頭に置きつつ、親の都合・親のタイミングでトイレに誘導するのではなく、「お子さんの行動・表情・おむつが濡れるタイミング」をじっくりと観察することから始めて欲しいとお伝えしました。また、夜尿症の治療にも関連する「塩分摂取の制限」に関しては、正木オリジナルの食品別塩分含有量の一覧表をお渡しし、幼少期から塩分摂取に配慮してあげて欲しいこともお伝えしました(前夜、夜なべして作成しましたー)。日本人の塩分摂取量は諸外国に比し多いことから、幼少期のおねしょへの影響のみならず、将来の生活習慣病予防も見据え、幼少期から塩分摂取量に配慮することは大切なことであるとご説明しました。

さて、次回のパパママセミナーは、
7月21日(日)小児科医が伝えたい こどもの急変・緊急時の対応(こんな時、あんな時、どうする?)」です。こどもの体調は、予期せぬタイミングで大きく変化することがあります。また、こどもの行動やこどもを取り巻く環境には、予期せぬアクシデントが潜んでいます。パパ、ママが、こどもの急変・緊急時に、落ち着いて対応できるように大切なポイントをお伝えできればと思っています。それでは、次回のセミナーで、皆様とお会い出来ますことを楽しみにしております。

メディカルパーク湘南こどもクリニック
正木 宏

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