御礼とご報告:第7回 パパママセミナーを終えて
平成31年2月24日(日)に開催した、第7回パパママセミナーのご報告です。ご参加いただいた皆様、日曜日の午前中という貴重な時間帯にお集まりいただき、心より御礼を申し上げます。
今回のテーマは、「小児科医が伝えたい予防接種(ワクチン)のお話し」でした。
冒頭、「感染症」の原因となる病原体が、「細菌」と「ウイルス」に大別されることからお話を始めました(毎度おなじみのホワイトボードを用いて!)。「細菌」は、自ら増殖できますが、「ウイルス」は、人の身体の中(細胞内)に入り込まないと増殖できないという大きな違いがあること。「細菌」や「ウイルス」によって、ヒトの健康が害されることを「感染症」と呼び、その「感染症」から身を守る手段のひとつが「予防接種」であること。「ワクチン」とは、感染症の予防に用いる医薬品を指すこと。「予防接種」の『接種』には、『種(=免疫)を植え付ける』という意味があること。そして、その『種』が、「ワクチン」に相当することをお伝えしました。先ずは、漠然とした解釈となりがちな用語の意味と関連性を確認しました。
次に、ワクチンには「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」の3種類があり、それぞれ、製造方法に違いがあることを説明しました。製造方法が異なる(生ワクチン:病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくす、不活化ワクチン:病原体となるウイルスや細菌の感染する能力を失わせる[不活化・殺菌]、トキソイド:病原体となる細菌が作る毒素だけを取り出し毒性をなくす)からこそ、接種間隔や接種回数に違いが生じることをお伝えしたかったのです。こうした、接種間隔や接種回数の縛りの中にあって、1歳前に接種すべき主なワクチンは、6~7種類、複数回の接種が必要なワクチンもあるため接種回数は15回以上にも及びます。したがって、生後2か月のワクチンデビューから1歳までの10か月間に、効率よく接種を終えるためには、複数のワクチンを同時に接種(同時接種)することを考慮せざるを得なくなるわけです。
そこで、同時接種って大丈夫? の疑問に対し、「世界中で標準的に行われている」「お子さんや保護者の負担を軽減できる」「お子さんの免疫機能に負担がかかるわけではない」「副作用が起こりやすいという医学的根拠はない」ことを紹介し、同時接種に明確なデメリットはないことをお伝えしました。
続いて、任意接種って必要? の疑問にもお答えしました。定められた期間に接種すれば公費(無料!)で受けられる定期接種は、素直に受けておきたいと思えるでしょう。一方、任意接種は、接種するかは親の意思に任せる上に、高額!となると、思わず躊躇してしまうのは当然です。しかし、高額だからこそ重要なワクチンであるともいえます。また、任意接種だったワクチンが、近年順次、定期接種化されている経緯を考えても、定期接種と任意接種は共に、重要であることに間違いはないのだと、お伝えしました。
続いて、最近10年(2008年以降)に日本で導入されたワクチンを、米国における導入時期と対比してご説明しました。日本では、Hibワクチンが2008年に(米国に遅れること21年)、結合型7価肺炎球菌ワクチンが2010年に(米国に遅れること10年)それぞれ導入されましたが、米国に比べ大幅に遅れていた事実をお伝えすると皆様、大変驚かれていました。私は、かつて、Hibや肺炎球菌の髄膜炎で重い後遺症を残した乳児や、なかにはお亡くなりになった乳幼児を目の当たりにしてきた経験があります。わが国では、重要なワクチンの導入が遅れた間に、多くの乳幼児が、感染症の脅威に晒らされ続けていたという事実をお伝えしたかったのです。私の娘が生まれた頃は、日本にHibと肺炎球菌のワクチンは未だ導入されておらず、職業柄、本当に心配な日々を過ごしたこともご紹介しました(苦笑)。そういう意味で、現在の予防接種事業は、ようやく欧米の先進国並みに成熟してきたと言えるのでしょう。だからこそ、適切な時期に、必要なワクチンを確実に接種することが重要なのです!
続いて、日本の定期 / 任意予防接種スケジュール表を用いて、各ワクチンの特徴と背景について、最新の情報を交えつつ、個人的見解を述べさせていただきました!!
最後に、Know VPD!:Vaccine(ワクチン)Preventable(防げる)Disease(病気)
VPDを知って、子供を守ろう! を啓発したWeb siteのご紹介をさせていただきました。
以上、8スライド(A4紙1枚に2スライド・両面刷りで2枚)をまとめたハンドアウトをもとにお話ししましたが、皆様、意外と“お腹一杯!” だったと思います。
後半30分、恒例の質疑応答タイムでした。予防接種に関わること以外のご質問も含め、多彩なご質問&お悩み相談をいただきありがとうございました。活発にご質問いただいたおかげで、15分予定を超過してしまいましたことをお詫び申し上げます。
さて、次回、3月24日(日)は
「離乳食、いつから?何を?どう与えればいいの?」をテーマに開催します。
皆様からのご要望を受け、3度目の開催となりますが、早速、多くの応募をいただき早々に定員に達してしまいました。多くのご応募をいただき感謝申し上げます。そこで、4月も同テーマで、“ 連続開催 ” することにいたしましたので、4月開催分のご応募をお待ちしております。
ご存知の方も多いと思いますが、つい先日の3月8日に、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」改訂に関する研究会で、「母乳によるアレルギー予防効果はない」という見解、「卵アレルギー予防のため、離乳食の初期(5~6か月)から加熱した卵黄を与えることを推奨する」という見解を、あらたに盛り込むことが報道されました。この内容は、過去のセミナーで、既に触れてきたことであり、今回の報道も踏まえ、あらためてセミナー内で詳しくご説明しようと思っております。
それでは、3月24日(日)のセミナーで皆様とお会いできますことを楽しみにしております。
メディカルパーク湘南こどもクリニック
正木 宏