御礼とご報告:第8回 パパママセミナーを終えて

平成31年3月24日(日) 第8回 パパママセミナーのご報告です。
今回も、好天に恵まれたことを幸せに感じました。ご参加くださった皆様、日曜日の午前中という貴重な時間帯にお集まりいただき、心より御礼を申し上げます。
そして、毎度のことながら2週遅れのご報告となりましたこと、お詫び申し上げます。

今回のテーマは、「離乳食、いつから?何を?どう与えればいいの?」でした。
同じテーマで3度目の開催となる上に、セミナー開催以来、最多の16名(大人)のご参加をいただき、パパママ達の離乳食に対する関心の高さを再認識しました。

冒頭、離乳食の開始時期について、厚生労働省がまとめた乳幼児栄養調査の資料から、直近の30年間を10年毎に棒グラフ化したものを提示し、徐々に離乳食の開始時期が遅くなっている事実を紹介しました。ちょうど、今のママ世代が生まれた頃であろう昭和60年の離乳食開始時期は、4か月(35%)が最多であったのに対し、平成27年の離乳食開始時期は、6か月(45%)が最多でした。これでは、おばあちゃん達からは開始が遅い!と言われ、一世代前の先輩ママ達からは早い!と言われてしまうことになり、混乱必至です。さらに、離乳食の開始にあたり、パパママは食物アレルギーのことを大変心配されます。そうした心配に加え、不確かな情報の氾濫も、離乳食の開始時期に影響を与えるのかもしれません。

そこで、2008年に英国の小児科医Lackが提唱した「二重アレルゲン(抗原)曝露仮説」、すなわち、アレルゲン(抗原)の経皮侵入(皮膚暴露)こそが、食物アレルギーの誘因であり、アレルゲンの経口摂取(経口暴露)は、むしろ、食物アレルギーの発症を抑制するという考え方が、支持されるようになってきた経緯をご紹介しました。こうした考え方の認知に伴い、食物アレルギーの発症予防と治療の方針も最近10年で大きく変わりました。例えば、食物アレルギーの中で最も頻度の高い「鶏卵」は、その摂取開始を遅らせる、除去するのでなく、「可能な限り早期から少量ずつ摂取し続けることで、消化管からの免疫寛容を誘導し、早期に耐性を獲得して量の上限なく食べられるようにする」というスタンスが、主流となってきたのです。そして、そうした流れは、我が国の指針(厚生労働省が主導)にも反映されることになりました。先月3月8日の厚生労働省による「授乳・離乳の支援ガイド」改訂に関する研究会での討議内容が、3月9日、3月16日に報道されました。12年ぶりとなる今回の指針改定では、母乳への過度な期待を見直すべく「母乳によるアレルギー予防効果はないこと」さらに、「離乳食初期(5~6ヶ月)から卵黄を与え始めることの推奨」が盛り込まれることになったという最新の情報をご紹介しました。

私は、過去2回のパパママセミナーで、赤ちゃんの発達が順調であれば、生後5ヶ月から離乳食を開始して早すぎることはないこと、また、離乳食開始後1~2週すれば、ゆで卵の卵黄部分を「耳かき1杯」程度から、少量ずつ与え始めることをお勧めしてきました。同様の内容が、国の指針改定にも反映される報道がなされたことから、あらためて、セミナー参加者の皆様に周知させていただきました。

もう一つの話題提供として、これも、つい最近3月5日に国立成育医療センターからプレスリリースされた研究で、『100%の家庭の子どもの寝具から鶏卵アレルゲンが検出!』さらに『鶏卵アレルゲンは、ダニアレルゲンよりも高濃度で検出!』という、衝撃的な結果が得られたことをお話しました。この報告と先の話をまとめると、卵のアレルゲンは、卵を食べる前から、高い確率で、既に皮膚を通じて感作されている可能性があることになります。つまり、「卵はいつから?」という心配の前に、離乳食を始めるまでの皮膚環境を良い状態に保つことのほうが、より重要だということです!

国立成育医療センターからのプレスリリース☟

 https://www.ncchd.go.jp/press/2019/20190305.html

鶏卵アレルゲンの論文はこちらから

続いて、乳幼児期における食行動の発達について触れました。「食べる」こととは、生後1~6ヶ月までの反射的に飲み、食べる時期を除くと、6ヶ月以降は、完全に学んで獲得する技能であること。乳幼児期は、嗅覚、味覚、聴覚、触覚、視覚を総動員して「食べる」ことを体感し、家族と共に楽しい時間と空間を共有しながら「食べる」ことを学んでいくこと。さらに、「食べる」ことには、乳幼児の心理発達が密接に関わっていることや、乳幼児の発達段階に合わせた食べ方、食べさせ方が大切であることにも触れました。中でも、手づかみ食べのススメ、スティック状にした野菜の活用、鏡によるミラーイメージの工夫など、ちょっとした“食べ方、食べさせ方のテクニック”についてご紹介しました。

後半の質疑応答タイムでは、既に離乳食を始めている一人のママからご来場のパパママに向け「離乳食を何分かけて与えていますか?」の問いかけが!すると、「うちは○○分!」「うちの子は、まだ関心がないので○○分!」といった応答があり、パパママセミナー始まって以来の“セッション”が繰り広げられました(嬉!)。上のお子さんに卵を与える時期を遅らせてしまったことを省みて、セミナーの内容を踏まえ、新たな決意を語ってくださったママもいらっしゃいましたね。親として、お子さんのために知っておくべきことを真剣に考えようとする姿勢を感じるご質問の数々に、敬意を表しつつ私なりのエッセンスを加えてお答えしました。

さて、次回は、セミナー始まって以来、初めての同テーマ連続開催となります。
4月21日(日)「離乳食、いつから?何を?どう与えればいいの?」のセミナーで、皆様とお会い出来ますことを楽しみにしております。

メディカルパーク湘南こどもクリニック
正木 宏

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