御礼とご報告:第13回 パパママセミナーを終えて
令和1年8月25日(日) 第13回 パパママセミナーのご報告です。
ご報告が遅れてしまい申し訳ございません。
ご参加くださった皆様、日曜日の午前中という貴重な時間帯にお集まりいただき、心より御礼を申し上げます。
今回のテーマは、「小児科医が伝えたい予防接種(ワクチン)のお話し」でした。
冒頭、予防接種の意義について、こども達の健康を「個人」として守ると共に、こども達の健康を「社会」全体として守ることであるとお話しました。その上で、予防接種の最大の目的は、ワクチンで防ぐことが出来る病気から、こども達の「健やかな人生」を守ることだと説明しました。
ワクチンで防ぐことの出来る病気に自然感染した場合、強い免疫を獲得できますが、重症化(合併症や後遺症)や、他人への感染の危険性は高まります。一方で、ワクチンの場合、作られる免疫は自然感染より少々弱いものの、重症化の危険性はほとんどなく、他人への感染はありません。つまり、自然感染より、はるかに安全に免疫を獲得できるのがワクチンなのです。
続いて、ハンドアウトをもとに以下のような内容をお話しました
① 「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」といったワクチンの違いとは、その「製造方法」の違いに基づく、免疫獲得システムの差にあることの図説
② 日本の定期/任意予防接種の種類とスケジュールの概要
③ 1994年(平成6年)の予防接種法改正により、予防接種は“義務接種”から“努力義務接種”へと変更された背景の概説
④ 予防接種改正法の成立以降、欧米諸国で当たり前に実施されていたワクチンが、日本では導入されないという、いわゆる「ワクチン・ギャップ」状態にあった過去
⑤ つまり、日本は、欧米先進国に比べワクチン後進国であった歴史のご紹介
⑥ 任意接種は必要か?の問いに対し 「必要であり!大切です!」の回答と説明
⑦ 同時接種は大丈夫?の問いに対し 「大丈夫です!むしろデメリットはない!」の回答と説明
⑧ 予防接種の有害事象と副反応の違いについてのご紹介
⑨ 予防接種の副反応として軽いものは、発熱・発疹・局所反応などで、20~30%の割合で発生
⑩ 予防接種の副反応として重いものは、アナフィラキシー・けいれん急性脳炎・急性脳症・急性散在性脳脊髄炎・ギランバレー症候群などで、10万接種に1の割合で発生
⑪ 定期接種で健康被害が生じた場合は、予防接種法に基づく救済制度が適用されること、任意接種で健康被害が生じた場合は、医薬品医療機器総合機構による救済制度が適用されることのご紹介
⑫ 神奈川県衛生研究所のウエブサイトを閲覧すると、本年3月~4月にかけて藤沢市で、麻疹(はしか)の散発流行があったことが公開されていること(未だ、身近に感染症の散発流行があることの啓発の意味でご紹介しました)http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/003_center/0005_ryukou/masin/190425_masin.html
⑬ ワクチンの実施忘れ、実施残しへの対策として、ワクチンスケジュールの節目のタイミングをイメージしやすい、「奇数の法則 1, 3, 5, 7, 9, 11歳」のご紹介
以上の内容を駆け足でご説明させていただきました。
セミナー後半の質疑応答タイムでは、
・自然感染とワクチンの副反応を比較した場合のリスク&ベネフィットは?
・各ワクチンを、生ワクチンにするか不活化ワクチンにするか選べるのか?
・ワクチンで得られた免疫(抗体)は、どのくらい(期間)もつと考えたらよいのか?
・水痘は今でも流行していますか?減っていますか?
・離乳食について、いわゆる“ねこまんま”スタイルって、だめですか?
・発熱時の対応について、薄着の程度、半袖・長袖どっちがいいの?
などなど、ワクチン関連やそれ以外のご質問を多数いただき、ありがとうございました。
それぞれの質問に、私なりの言葉でお答えをさせていただきました。
さて、次回9月29日(日)のパパママセミナーは、
「小児科医が伝えたい こどもに与えるお薬の話」です。
抗生物質は、どんな時に内服すべきもの? 解熱剤は、使用しない方がいいの? 正しい軟膏の塗り方は? などなど、こどもに与える様々なお薬のことについて、ご両親に知っておいていただきたいことを分かりやすく説明させていただきます。「へぇ~そうだったのか!」と思っていただけるようなお話をしようと思いっています。
メディカルパーク湘南こどもクリニック
正木 宏