シナジスによるRSウイルス感染症予防
Prevention of respiratory syncytial virus infection by Synagis
RSウイルス感染症とは
RSウイルスによる呼吸器の感染症です。生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染するとされています。大人はかかっても軽い鼻かぜですみますが、乳幼児では細気管支炎や肺炎で呼吸困難となり入院が必要となることがあります。とりわけ、早産で生まれた乳幼児、気管支肺異形成症の治療を受けたことのある乳幼児、心臓の病気を持っている乳幼児、免疫力が弱いあるいはダウン症候群の乳幼児、特定の基礎疾患を有する乳幼児において、重症化のリスクが高いとされています。以前は秋~冬季が流行期間とされてきましたが、近年では夏季から流行が始まるようになってきています。
シナジスとは
RSウイルス感染を防ぐ抗体成分を精製した予防薬(注射)です。
効果の持続期間は1か月なので、RSウイルスの流行期間中は毎月注射を行います。
RSウイルス感染症の重症化を予防するためには、流行が始まる前にシナジス投与を開始し、流行期間中は抗体を充分に維持する必要があります。
RSウイルスはここ数年、流行季節が大きく変動しており、毎年RSウイルスの流行予測に基づいて、投与期間や回数が決定されます。
開始時期や投与回数の詳細は、適宜お知らせしてまいります。
保険適応(乳児医療の費用負担)でシナジス®を投与できる対象者は、RSウイルスに感染すると症状が重症化しやすい以下の①~⑪のいずれかの条件に該当する児です。なお、⑦~⑪の5疾患群は、2024年度より、シナジス®投与の適応に追加されました。
シナジス投与対象者
▼投与開始時点で、以下の①~⑪のいずれかの条件に該当する児です
① 在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児および乳児
② 在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児および乳児
③ 過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児および幼児
④ 24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児および幼児
⑤ 24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
⑥ 24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児
⑦ 24ヵ月齢以下の肺低形成を伴う新生児、乳児および幼児
⑧ 24ヵ月齢以下の気道狭窄を伴う新生児、乳児および幼児
⑨ 24ヵ月齢以下の先天性食道閉鎖症の新生児、乳児および幼児
⑩ 24ヵ月齢以下の先天代謝異常症の新生児、乳児および幼児
⑪ 24ヵ月齢以下の神経筋疾患の新生児、乳児および幼児
ご予約について
基本的には、予防接種・健診の時間帯に投与を行います。
シナジスは、予防接種ではないので、予防接種との同時投与も可能です。
当院にてシナジス投与を希望される方は、お子さんがシナジス投与対象者に当たるかをご確認の上、お電話にてお問い合わせください。
また、医療機関よりシナジス投与の指示や説明を受けている方で、当院での実施を希望の方は、紹介状が必要となります。
国内における抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤は、2002年に導入されたシナジス®(パリビズマブ)に加え、2024年には長時間作用型という特徴を有するベイフォータス®(ニルセビマブ)が導入されましたが、当院では、ベイフォータス®の投与について現時点では対応しておりませんので、何卒、ご理解、ご注意の程、お願いを申し上げます。
なお、毎年度ごとに設定される流行期以外の「非流行期」に抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤であるシナジス®(パリビズマブ)もしくはベイフォータス®(ニルセビマブ)を初回投与された、早産児、気管支肺異形成症、先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群の児の中には、次年度のRSウイルス流行期間内にシナジス®投与の適応となる方もおられます。ただし、国内においては、現在2種類の抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤が併用されていることで、適応判断および選定が大変複雑で分かりにくくなっております。シナジス®投与対象者に当たるもののRSウイルス流行期間内にシナジス®投与の適応があるのか否か、判断に迷われる場合はお問い合わせいただけますと幸いです。
院長 正木 宏