2024年シーズンより鼻にスプレーするタイプの新しいインフルエンザワクチン 「フルミスト®点鼻液」をはじめます

このワクチンは、アメリカでは2003年、ヨーロッパでは2011年に認可され、その安全性と有効性は既に実証済みであったにもかかわらず、昨年(2023年)までは国内未承認のワクチンでした。したがって、昨年まで、国内でこのワクチンを接種する場合、医療機関が独自に海外からの輸入を余儀なくされていたのです。それでも「優れたワクチン」なので、接種を実施していた医療機関はありました。ただし、国内未承認のワクチンなので、万が一、ワクチンによる健康被害が生じたとしても「予防接種健康被害救済制度」の対象外となり公的な補償は認められていませんでした。つまり、基本的に自己責任の下に接種が行われていたのです。当院では、このワクチンの有効性、安全性を認識しつつも、万が一、ワクチンによる健康被害が生じた際の公的補償が認められていないという一点を理由に、昨年まではこのワクチンの取り扱いを控えていました。一方で、個人的には小児の季節性インフルエンザ感染症の予防対策として、とても理にかなった優れたワクチンであると認識していましたので、国内で正式に薬事承認されれば直ちに導入したいと考えていました。そうしたなか、2023年3月27日、厚生労働省は日本国内での製造販売を承認し、2024年秋からの販売開始を発表しました。国内での薬事承認が得られたことで、ワクチンによる健康被害が生じた場合にも「予防接種健康被害救済制度」の対象となったことから、晴れて2024年シーズンより、当院も「フルミスト®点鼻液」を導入することにしました。従来の注射インフルエンザワクチンは、今後も継続されます。さらに、2024年から「フルミスト®点鼻液」という新たな選択肢が増えたということになります。そこで、従来の注射インフルエンザワクチンとの違いを含め、「フルミスト®点鼻液」についてご説明します。

特徴

「フルミスト®点鼻液」は、鼻腔内に噴霧(スプレー)するタイプのワクチンなので、従来の注射インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)と異なり針穿刺の必要がなく、被接種者の身体的・心理的負担の軽減が期待できます。つまり、「痛くない」から「怖くない」が、大きな特徴になります。また、不活化ワクチンである従来の注射インフルエンザワクチンの予防効果が 4~5ヶ月程度なのに対し、生ワクチンである「フルミスト®点鼻液」は、予防効果が約 1 年と長く持続する点も特徴のひとつといえます。

効果

従来の注射インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)と同等の効果と評価されています。

安全性

重大な副反応としてショック、アナフィラキシーが挙げられますが、これは全てのワクチンに共通するものです。しかし、国内第Ⅲ相試験における安全性の評価においては重大な副反応の報告はありませんでした。主な副反応として、鼻閉・鼻漏、咳嗽、口腔咽頭痛、頭痛などが報告されています。その他、一般的な予防接種後の副反応が起こる可能性はありますが、頻度は少ないとされています。基本的に生ワクチンだから強い副作用が出やすいということはありません。ただし、経鼻投与(鼻腔内に噴霧するタイプのワクチン)の生ワクチンという特性上、鼻閉・鼻漏、咳嗽、口腔咽頭痛といった上気道炎症状は、注射インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)に比較すると発現する可能性が高いとご認識いただいておいた方がよいでしょう。

接種の対象

2歳以上、19歳未満の方

用法と用量

上記対象の方に、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧します

接種費用 価格

注射インフルエンザワクチン同様に任意接種のワクチンなので接種費用が生じます 価格は決定次第 ホームページにてお知らせします

接種をお考えの際に注意すべきこと

「フルミスト®点鼻液」の接種を受ける前に、接種を受けることが出来ない方、接種を受けても大丈夫なのか注意して判断をしなければならない方がいることにご留意ください。以下に難しい専門用語が並びますが、大事な点なのでお目通しいただき、接種を受けたいのだけど大丈夫なのか?と判断に困られた場合には当院にお問い合わせください。

接種不適当者 (接種を受けることが出来ない方)

  • 接種の対象となる年齢以外の方
  • 明らかな発熱(37.5℃以上)を呈している方
  • 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
  • ワクチンの成分(鶏卵、ゼラチン、ゲンタマイシン、アルギニン)によってアナフィラキシーを呈したことが明らかな方
  • 明かに免疫機能に異常のある疾患を有する方及び免疫抑制をきたす治療を受けている方
  • 妊娠していることが明らかな方

接種要注意者 (接種の判断を行うに際し、注意を要する方)

以下のいずれかに該当する場合は、予めご相談ください。健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行います。その上で接種する場合は、予防接種の必要性、副反応、有用性についての説明をさせていただき、ご理解、ご同意を得て、注意して接種します。

一方、接種は控えた方が良いと医師が判断した場合は、ご希望があっても接種出来ないこともありますのでご理解下さい。

  • ゼラチン含有製剤又はゼラチン含有の食品に対して、ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血管 性浮腫等)等の過敏症の既往のある方
  • アスピリンを服用している方
  • 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する方
  • 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた方及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある方
  • 過去にけいれんの既往のある方
  • 過去に免疫不全の診断がなされている方、及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる方
  • 重度の喘息を有する方、または喘鳴の症状を呈する方
  • 鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのある方
  • 生殖能を有する方:妊娠可能な女性においては、あらかじめ約1か月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2か月間は妊娠しないようにする必要があります
  • 注射の痛みに敏感な方
  • 注射インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)を接種しても毎年のようにインフルエンザにかかってしまうという方
  • 注射インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)を接種した部位が、いつも大きく腫れてしまうという方
  • 受験生の方   受験生の方は、万全を期すために「フルミスト®点鼻液」(生ワクチン)と注射インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)の両方を接種しておくことも可能ですので、ご相談ください。



メディカルパーク湘南こどもクリニック
院長 正木 宏